WEB検索の未来「ソーシャルサーチ」について考える

Share このエントリーをはてなブックマークに追加

1996年のGoogle誕生以来、WEB上の情報コンテンツへの入り口は検索サイトが主流となった。
検索サイトは独自のアルゴリズムを持ち、キーワードを軸に、ユーザーが必要とする最適な情報を
提供する優れたシステムだ。
しかし現在、WEB上における情報過多はさらに勢いを増しているといえる。
日々増え続ける膨大な情報の中で、「何が本当に必要な情報か?」「何がノイズか?」はユーザーの価値観によって
変わる。ノイズを減らし、整理を行った上で(キュレーションの必要性)、ユーザーの個性に合わせた情報提供の必要性が出てきている。
それを踏まえ、WEB検索の未来である「ソーシャルサーチ」について考えてみる。


ソーシャルサーチって何?

現代において「ソーシャルサーチ」という言葉は、まだ完全に定義されていないと思われる。
本エントリーでは「ソーシャルサーチ」を下記のようなものとして定義する。

“ソーシャルプラットフォームとの親和性が高い拡張機能を兼ね備え、そこから収集される
ユーザー個人の属性情報を解析し、検索結果を個人別にカスタマイズする検索システム。”


※現在Googleが実装している「Google Social Search」とは少し趣旨が違う。


BingとFacebookの提携
一番分かりやすい例としては、先日のBingとFacebookの提携がある。

【参考リンク】
Microsoft、Facebookを「いいね!」―Bing検索にユーザーのソーシャルデータが反映

概要は以下。
■Bingで検索を行うとFacebookのアカウントが認識される。
■Facebook上の友だちがLike!(いいね!)した対象が自動的に検索され、表示される。
■Likeした友だちの名前が付加される。

この提携は、世界初の大規模サイトによる 「ソーシャルサーチ」の誕生であり、
今後も理想型に向かって進化していくだろう。



従来のWEB検索とソーシャルサーチにおける情報取得の流れの違い


従来のWEB検索による情報取得の流れ
(※クリックで拡大)

現状は、コンテンツ・内部設定・被リンク等から機械的に解析されたアルゴリズムでの順位表示。
検索結果に対してのクリック判断基準は「順位」と「数行のサマリー」のみ。
また、情報取得後の共有ツールも直接的には提供されていない。


ソーシャルサーチによる情報取得の流れ
(※クリックで画像拡大)

従来とは違い、ソーシャルプラットフォーム上でのプロフィール・活動履歴を解析した上で、ユーザー別の
パーソナルな検索結果が得られる。
検索結果に対してのクリック判断基準は「順位」「サマリー」に加えて、他ユーザーの評価までが可視化される。
情報取得後のシームレスな共有方法も検索サイトによって公式に提供される。


ここで示したように、ソーシャルな要素が加わることによって、検索→情報取得→共有までの流れが
今後大きく変わっていくと考えられる。では具体的に何がメリットで、どのように便利になっていくのだろうか?



ソーシャルサーチがもたらす検索体験の変化


変化① 興味範囲に基づいた検索結果のパーソナライズ
今後の仕組みでは、検索前にソーシャルプラットフォームへログインすることになる。
そうすることによって個人が特定され、事前に収集されている属性情報(人間関係・趣味趣向・行動履歴)の解析が加わり、ユーザーに対して信頼性が高く、なおかつ精度の高いレコメンドができる。

例えば、Aさんは「宇宙戦艦ヤマト」が好きだとする。しかし「ヤマト」というキーワードで検索を行うと、検索結果上位には「ヤマト運輸」が表示される。これは検索サイトがキーワードをベースに、ユーザー属性に関係なく、全員に一律の結果を機械的に提供している以上、当たり前のことだ。
しかし、最も理想的な検索とは、ユーザー個人の傾向に合わせて検索結果を最適化させることだ。

普段からソーシャルプラットフォーム上で「宇宙戦艦ヤマト」について発言し、ファンページを評価しているAさんには「宇宙戦艦ヤマト」が優先的に表示されるべきである。そして、プロフィールや、よく行く場所が「渋谷」だという属性解析から「『SPACE BATTLESHIP ヤマト』を上映している、渋谷近くの映画館」までが情報として反映されてくればどうだろう。
さらに加えて、友人達が高く評価している「ヤマト」関連ニュースがレコメンドされるのだ。Aさんはたった3文字のキーワードでパーソナライズドされた質の高い情報を手に入れることができる。
これこそが、ソーシャルWEB時代の理想の検索エンジンではないだろうか。


変化② アルゴリズムと検索結果画面に他ユーザーの評価が加わる
これまでの検索結果画面で提示されるのは、機械的アルゴリズムがもたらす「表示順位」と、数行の「サマリー文」程度であった。(※Googleでは最近になり「Instant Preview」がリリースされ、サムネイル表示も可能となった)
それだけの情報の中で、人々は表示順位が高いものからクリックする傾向にある。

検索順位が重要な要素であるにも関わらず、現在の順位決定アルゴリズムは機械的なものだ。
しかし、このアルゴリズムにユーザー評価(※ここでの例はFacebookのLike!(いいね!))が加わると、どうなるだろうか。Like数が多いサイトは、相対的に価値の高いコンテンツである可能性が大きい。価値の高いであろう情報を上位表示させるのは、検索サイトの義務だ。今後はLike数が順位決定アルゴリズムに加わってくると考えられる。

また同時に、検索結果画面に各サイトの「いいね!」が表示されていたらどうだろう?表示順位が少しばかり低くとも、「いいね!」の数が多いサイトをクリックしたくなる心理が働くはずだ。さらに、そのサイトを「いいね!」と評価しているユーザーの中に、友人がいたらどうだろうか。口コミ等の不特定多数の評価による心理変動は、“信頼度”が重要な要素だ。友人の評価というような信頼度の高いレコメンドは情報取得・購買意欲に対しても大きな効果を発揮する。これらの情報は、現代のWEB社会において非常に有効な判断材料となるのだ。

これは現在のSBM(国内では主にはてなブックマーク)で、人気の高いサイトにバイラル的にトラフィックが流入するという統計からも見てとれる。これはよく言われる、WEB2.0時代以降の「オーソリティ(権威)の変化」の影響であると考えられる。


変化③ シームレスなシェアを実現するソーシャルツールの提供
あなたが検索結果画面を経て、ようやく目的のサイトに辿り付き、有用な情報を手に入れたとしよう。これらの情報を他ユーザーに共有したいと思った時、あなたはどうするだろう。Twitterに流す?Facebookでシェア?それともTumblrにポスト?とりあえずはてブコメントを残す?
選択はユーザーによって様々であろう。しかし、どの選択肢を選んだにせよ、各サービスに情報を運んでいくのはユーザー自身だ。現在の検索サイトは、一覧画面から各サービスへシームレスに共有できるツールを持ち合わせていない。

ソーシャルWEBの時代になり、口コミ・評価・情報共有が当たり前の行為になってくると、シームレスな共有ツールが必要不可欠になると考えられる。ユーザーの手間を考えると、このような仕組みは、検索サイト自身が提供するべきではないだろうか。
例としては、検索結果画面の各サイトタイトル横に「いいね!」ボタンが実装されるイメージ。それだけで、WEBリテラシーの低いユーザーでも、すべてのサイトに対してワンクリックで簡単に評価できる仕組みが出来上がる。最終的には「いいね!」だけでなく、各種サイトへの自動共有ツールが実装されるのが理想である。



以上が、大きく変化するであろう仕組みとなる。
最後に、ソーシャルサーチの仕組みの中で、さらに将来的に検討するべき事項を挙げてみる。



ソーシャルサーチの仕組みとして今後検討していくべき課題


極端なパーソナライズドは稀なニーズに対してノイズとなり得る
Aさんの例を再び。Aさんが検索する「ヤマト」のキーワードは、前述の通り「宇宙戦艦ヤマト」の情報が占める割合が大きくなるだろう。しかし、時と場合によって、Aさんは「ヤマト運輸」の情報が知りたい時もあるはずだ。そのような時、極端なパーソナライズドは、ありがた迷惑となる可能性がある。この問題を解消する為には、検索ボタンの複数化や、スラッシュコマンドによる区分けのような、ユーザーに選択肢を与える仕組みが必要になる。


PV数とLike数の関係性について
今後、Like!(いいね!)がサイトの評価指標となっていくと考えた時に、サイトに対する単純なLike数を鵜呑みにしてもよいか?という問題もある。
より多くの人が評価したサイトが優れている可能性は高いが、相対的に見た場合、1PV当たりのLike数という点に注目すべきではないだろうか。10,000PVで100Likeのサイトと、100PVで100Likeのサイトでは、後者の方が情報価値は高いはずである。(訪れた内の100%の人が良いと評価しているわけだから。)
PV当たりのLike数を仮にLike率と定義し、サイト評価のひとつの指標としてみることも重要ではないかと考える。


Dislike機能の必要性
Like!(いいね!)ボタンは、最小労力でコンテンツを評価できる素晴らしい発明と言えるが、逆にDislikeという概念を持つサービスは意外に少ない。サイトの評価から順位決定を行うのであれば「いいね!」とは逆の「よくない!」という評価軸も、今後必要になってくるかもしれない。


SEOの概念はどうなる?ブラックハットは?
SEOの世界は今も昔もいたちごっこだ。ランキングの評価軸が変わろうが、ブラックハットは登場するだろう。
架空アカウントでのLike稼ぎ、インフルエンサーの金銭買収、さまざまな手を使って上位対策を施してくるに違いない。
検索サイト側は、そういった行為のスパム判定を行うために、新たな仕組みを構築しなければならない。


人に知られたくないプライバシーもある
Like情報が常時共有されることに対して、プライバシーの問題も無視できない。自分のLikeが知人に筒抜けである状態で、アングラな情報や人に知られたくない情報にLikeはつきにくい。そうなると、特定コンテンツにおいて情報価値の判断ができない状況に陥る可能性がある。それを防ぐための「匿名Like」や「ステルスモード」のような機能が登場するかもしれない。



以上が、本エントリーのソーシャルサーチ未来予測である。
今後のWEB検索がソーシャルと融合することによって、これまでにないほどの変革期を迎えることは、
ほぼ間違いないだろう。
Googleの戦略も含め、今後も進化を見せるてくれるであろうソーシャルサーチの動向を見守っていきたい。

0 Response to "WEB検索の未来「ソーシャルサーチ」について考える"

コメントを投稿